お世話になっているおばさんがいる。
おばさんは足が悪い。
が、生まれつきではない。
去った大戦で壕に隠れていた時
銃で撃たれ、弾が肩から足にかけて貫通した。
ご両親も撃たれ目の前で亡くなった。
米軍が火を放ったのか
周りが火の海になった。
万事休すと思い、死ぬなら早く死にたいと
火の方に体を預けた。
膚の焦げる臭い。熱い。
その時、米軍に見つかり捕虜になった。
収容所からすぐ船で搬送され手当てを受けた。
一命は取り留めたが、足に障害は残った。
大きな火傷の痕が腕にできた。
「娘だったから半袖の服も着たかったよ。」
火傷の痕は足の皮膚を移植して、今はそれほど目立たない。
「相当(費用が)かかったよ。」
翌日だったか、知り合いのおじさんにそのおばさんの話をすると
「彼女は若い頃、それはきれいな娘さんだったよ。
お金持ちの一人娘でね。ご両親も大変親切な人だった。」
彼はそう付け加えた。